早稲田渋谷シンガポール校の2023年入試問題が学校ホームページで公開されたので早速解いてみました。どのような問題が出題されるのか解説とともに紹介します。対策の参考にしてください。

シンガポールはタイのすぐ近くにあることもあって早稲田渋谷シンガポール校はバンコク、シラチャの生徒にも人気のある学校です。私の教え子たちも何人か進学しています。
入試科目は国語、数学、英語の3科目で各100点の合計300点満点です。第一志望の合格点は5割くらい、併願の合格点は6割くらいと言われています。
それでは、各科目の入試問題について解説していきます。
国語
問題構成は、
[1]論説文
[2]小説文
[3]古文
のスタンダートな形式です。
[1]論説文
出典は高階秀爾『実体の美と状況の美』
高階秀爾さんは美術史家で、東京大学教授や国立西洋美術館館長なども務められていた方です。美術に興味のある人なら誰でも一度は高階さんの本や文章を読んだことがあるのではないでしょうか。高階秀爾さんの文章は国語のテキストや入試問題でもよく見かけます。
問一、漢字の問題で10点
問二、接続語など選ぶ問題で10点
こういう基本的なところで落とさないようにしたいですね。
問三、四、五は線部の意味や空欄補充など内容理解が必要な問題です。
問六の記述問題は12点と配点が高いです。部分点もあるはずなので、記述の対策もしっかりしておきましょう。「日本人とアメリカ人の美意識の違い」を説明せよ、という本文の要約にもなるような問題です。日頃から読んだ文章をコンパクトに要約する練習をしておくと良いでしょう。
[2]小説文
出典は岡本かの子『鮓』
岡本かの子は1889年生まれ、大正・昭和時代の作家です。歌人、仏教思想家としても活躍しました。太陽の塔や「芸術は爆発だ」のセリフでも有名な岡本太郎の母でもあります。出典の『鮓』は晩年に書かれた小説です。
文章量はA4サイズで9ページ半程度。なかなかの文章量なので、文学的文章は長いものを読みなれておく必要があります。
問一は「懇ろな」や「居丈高になって」という言葉の意味を選ぶ問題。日頃の読書量が試される問題です。
問二の記述問題は10点です。ここも配点が高いので書きたいところです。
線部に「こういう湊」とあるので、指示語「こういう」の内容を説明しましょう。また、好きではないということは「理想」ではない、ということですね。
問三、四、五、六は線部の意味や理由、表現など内容理解が必要な問題です。特に問六の内容と表現に関する問題は難しいと思います。
「なんとなく」ではなく、文章のどこからその解答が選べるのか、正解ではない選択肢のどこが違っているのかをよく吟味してください。
[3]古文
出典は鎌倉時代の仏教説話集『沙石集』
古文は内容理解ができれば解ける問題です。狩りをして、つがいの片割れがやってきてかわいそうに思うという、よくあるストーリーです。
本文も短く難問もありません。基本問題で良いので、たくさん解いて古文慣れしておきましょう。

記述の配点が高いからと選択肢の問題をおろそかにしないこと。選択肢の問題も一問5点と配点が高いので、雑に解いていると痛い目をみます。選択肢の問題こそ日頃から丁寧に取り組んでください。
数学
問題構成は、
[1]小問集合
[2]関数(放物線と図形)
[3]方程式
[4]図形
[5]確率
[1]小問集合
問題数は8問、確率や中央値を求める問題などバリエーション豊富です。難問はないので大問1はミスなく満点を取りたいところです。
[2]関数(放物線と図形)
(2)直線y=cxの定数cを求める問題。
A(3, 3)でE(-6, 0)なのでEF:FA=3:1
△AFE∽△OGCなのでOG:GO=3:1
定数cは-3だとわかります。
(3)△ADOと△BCDの面積比を求める問題。
交点の座標はすべて求めることができるので、ミスをしないように丁寧に計算してください。
△ADO:△BCDはAD×OD:BD×CDで求めることができます。
共通の三角形BDOを基準に比を考えてみたり、気合と時間があれば愚直に計算して面積を出すこともできます。
(1)基礎問題、(2)標準問題、(3)応用問題で(3)に時間がかかりそうです。時間配分が苦手な人は(3)は飛ばすという作戦もありです。
[3]方程式
方程式の食塩水のような問題です。ここも丁寧に解いて落としたくないところです。
(3)にちょっと時間がかかりそうです。
[4]図形
「和子の定理」という名称に笑ってしまいましたがこれはトレミーの定理ですね。
ここは混乱しそうな生徒もいそうなので考え方を書いておきます。
(1)和子の定理の証明
アBM, イAB, ウAC, エBM, オAC, カDM, キAC

(2)正五角形の場合

(3)正七角形の場合

解説動画もアップロードしたので、もっと詳しい説明はこちらをご覧ください。
[5]確率
書き出してもそれほど時間をかけずにサクッと解けるはず。

基礎問題と標準問題を落とさずに正解すれば6割以上は取れるようになっています。苦手な分野を作らず基礎力をしっかりつけましょう。「過去問をやって満点でした!」と見せに来てくれる生徒もいます。数学が得意な生徒は高得点を目指してください。
英語
問題構成は、
[1]リスニング
[2]発音、アクセント
[3]並び替え
[4]英単語
[5]要約
[6]物語文
[7]説明文
[1]リスニング問題
大問1は二人の会話を聞いて質問に答える問題です。
「パーティまで3時間あって、バス停まで10分、駅までバスで20分、電車で2時間、駅からビルの家まで20分」「特急で1時間だよ、ビルは駅の近くに引っ越したから歩いて10分だよ」というような混乱を誘う会話で細かい計算をさせる問題が出題されるので満点を取るのは難しいと思います。
大問2はシングルスピーカーの話を聞いて質問に答える問題です。
解答の選択肢の文がリスニング本文で直接読まれるわけではないので、状況を理解して正解を選ぶ力が求められます。
[2]発音、アクセント問題
breathe(呼吸する)の[ríː]の音が出題されました。breath(息)と名詞になると[e]の音になるので、間違えやすい単語です。
[3]並び替え
(1)He is looking for someone who can take care of his dog.
(2)She studied English so hard that she can read books written in English.
日本語訳があるので標準的なレベルの問題です。
[4]英単語
英文の意味になる英単語を考える問題です。簡単ではないので日頃から意識して語彙力をつけていきましょう。
[5]要約
2022年入試から登場した、本文を50語以内の英文に要約する問題です。
お金はないけど幸せ者のSamが、お金持ちのMr.Brownから大金をもらう。しかし、それ以来Samはお金のことが心配で眠れなくなってしまい、結局お金を返す、というお話。
[6]物語文
長めの物語文で1見開き1ページが文章です。
ベニーは友達から「願い事を叶えるマシーン」をもらう。願い事をしてみると、ベニーの願い事は叶ったり叶わなかったり(Lサイズのミートビザが欲しいと願うと、マッシュルームピザが2切れだけ置いてあったりなど微妙に叶う)実はそれは、ベニーがいつもコイン(お金)をあげていたホームレスが恩返しをするためにやったことだった。
問3 legitimate「本物の、道理にかなった」という形容詞の本文中での意味を選ぶ問題。単語の意味がわからなくても文脈から判断できる問題です。内容理解力が求められます。
ほとんどの問が内容理解力を問う問題でした。ちょっと長めの物語文を読む練習をしておきましょう。
[7]説明文
Australian magpie(カササギフエガラス)という鳥の生態についての説明文です。追跡のために取り付けた装置やハーネスを頭の良いmagpieは助け合って取り外してしまいます。彼らにはrescue behaviorがあることがわかりました。
問1 空欄補充問題。「〜するのに苦労する」have a hard time〜ingというイディオムのhaveとtimeの部分が空欄。語彙力が試される問題です。
問4 outsmart「出し抜く(知恵を使って勝つ)」という動詞の意味を選ぶ問題です。単語の意味がわからなくても文脈から判断できる問題です。内容理解力が求められます。
問8 内容一致の問題。本文のnot commonが選択肢ではnot oftenに言い換えられています。

リスニング、発音、アクセント、語彙力、文法、長文読解と、バランスよく英語力を伸ばしていってください。
コメント