2022年全国公立高校入試「論説文」出典一覧

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高校入試の国語では、漢字や言葉の知識、論説文、小説文、古文や漢文、短歌や俳句など、また、県によっては作文もセットで出題されます。今回は2022年入試の「論説文」でどのような文章が扱われたのかをまとめてみました。

実は中学生は文庫本は読んだことがあっても新書を読んだことがないという子どもたちが思いのほか多いです。朝読や読書感想文で読むのも良いでしょうし、入試のためにも新書もちょっと読んでみようかな、という人は参考にしてみてください。

2022年入試で複数の県で出題された本があります。

藤田正勝『はじめての哲学』(岩波ジュニア新書)は福島県、長野県、奈良県、島根県の4つの県で出題されています。

岩波ジュニア新書はその名の通り、中高生でも読みやすい入門新書のシリーズです。『はじめての哲学』では、「生きる意味」や「自己とは何か」といった誰もが直面するテーマをわかりやすく教えてくれます。特に「言葉とは何か」というのは模試や入試問題でもよく扱われるテーマのひとつです。

哲学というと、どうも深刻なものというイメージを持っている人もいるかもしれませんが、この本は世界をいきいきと感じたり、生きる意欲を刺激してくれる本になっています。

河野哲也『問う方法・考える方法―「探究型の学習」のために』(ちくまプリマー新書)は、三重県、山口県、鹿児島県の3つの県で出題されています。高校で2022年から実施される新学習指導要領の「探求型学習」に合わせてのタイムリーな出題です。

意欲を持って学び、対話し、世界から苦しみを減らし、楽しいことを増やすこと。「何のために勉強するの?」という子どもたちの疑問へ答えるヒントがあります。

上記の2冊だけではなく、高校入試では、下記の一覧を見ての通り、哲学的なテーマの文章が多く出題されています。

まったく馴染みのないテーマの文章よりも、読んだことがあるテーマの文章の方が素早く正確に理解することができます。入試問題や問題集でたくさんの論説文に慣れておくのも良いですが、心に余裕をもって読書量を増やしていってほしいと思います。

2022年全国公立高校入試「論説文」出典一覧

北海道:出題なし
青森:樋口桂子『日本人とリズム感―「拍」をめぐる日本文化論』(青土社)
岩手:玄田有史『希望のつくり方 』(岩波新書)
宮城:若松英輔『読書のちから』(亜紀書房)
秋田:稲垣栄洋『雑草の成功戦略―逆境を生きぬく知恵』(NTT出版)
山形:平賀緑『食べものから学ぶ世界史 人も自然も壊さない経済とは?』(岩波ジュニア新書)
福島:藤田正勝『はじめての哲学』(岩波ジュニア新書)
茨城:高橋進『生物多様性を問いなおす―世界・自然・未来との共生とSDGs』(ちくま新書)
栃木:三井秀樹『形の美とは何か』(NHKブックス)
群馬:田中修『植物のいのち-からだを守り、子孫につなぐ驚きのしくみ』 (中公新書)
埼玉:佐藤岳詩『「倫理の問題」とは何か メタ倫理学から考える』(光文社新書)
千葉:枡野俊明『人生は凸凹だからおもしろい 逆境を乗り越えるための「禅」の作法』 (光文社新書)
東京:大須賀節雄『思考を科学する—「考える」とはどういうことか?—』(オーム社)
都立青山:岩佐茂『環境保護の思想』(旬報社)
都立西:佐倉統『科学とはなにか 新しい科学論、いま必要な三つの視点』 (ブルーバックス)
都立八王子:バトラー後藤裕子『デジタルで変わる子どもたち―学習・言語能力の現在と未来』 (ちくま新書)
都立国立:品川哲彦『倫理学入門―アリストテレスから生殖技術、AIまで』 (中公新書)
神奈川:小浜逸郎『日本語は哲学する言語である』(徳間書店)
新潟:桑子敏雄『生命と風景の哲学―「空間の履歴」から読み解く』(岩波書店)
富山:田中修『植物のいのち-からだを守り、子孫につなぐ驚きのしくみ』 (中公新書)
石川:小原嘉明『入門! 進化生物学―ダーウィンからDNAが拓く新世界へ』 (中公新書)
福井:伊藤亜紗【編】『「利他」とは何か』(集英社新書)
山梨:岸本尚毅『十七音の可能性』(角川俳句ライブラリー)
長野:藤田正勝『はじめての哲学』(岩波ジュニア新書)
岐阜:岩崎武雄『哲学のすすめ』 (講談社現代新書)
静岡:五木寛之『生きるヒント 自分の人生を愛するための12章』(角川文庫)
愛知A:内山節『自由論―自然と人間のゆらぎの中』(岩波人文書セレクション)
愛知B:増井元『辞書の仕事』(岩波新書)
三重:河野哲也『問う方法・考える方法―「探究型の学習」のために』(ちくまプリマー新書)
滋賀:佐藤卓 『塑する思考』 (新潮社)
京都:上平崇仁『コ・デザイン─デザインすることをみんなの手に』(NTT出版)
大阪A:近藤雄生『まだ見ぬあの地へ―旅すること、書くこと、生きること』(産業編集センター)
大阪B:西村幸夫『都市から学んだ10のことーまちづくりの若き仲間たちへ』(学芸出版社)、白井明大『季節を知らせる花』(山川出版社)
大阪C:中村明『日本語の作法―しなやかな文章術―』(青土社)、藤幡正樹『不完全な現実―デジタル・メディアの経験』(NTT出版)
兵庫:森田真生『計算する生命』(新潮社)
奈良:藤田正勝『はじめての哲学』(岩波ジュニア新書)
和歌山:本川達雄『生物学的文明論』 (新潮新書)
鳥取:平田オリザ『対話のレッスン 日本人のためのコミュニケーション術』 (講談社学術文庫)
島根:藤田正勝『はじめての哲学』(岩波ジュニア新書)、吉田精一『現代詩』 (学灯文庫)
岡山:原研哉「日本のデザイン、その成り立ちと未来」出典は『創造するということ』 (ちくまプリマー新書)
広島:田中修『植物のいのち―からだを守り、子孫につなぐ驚きのしくみ』 (中公新書)
山口:河野哲也『問う方法・考える方法―「探究型の学習」のために』(ちくまプリマー新書)
徳島:千住博『千住博の美術の授業 絵を描く悦び』 (光文社新書)
香川:(宮内泰介の文章による)
愛媛:福田育弘『ともに食べるということ―共食にみる日本人の感性』(教育評論社)
高知:納富信留『対話の技法』(笠間書院)
福岡:河合雅司『未来を見る力 人口減少に負けない思考法』 (PHP新書)
佐賀:上田紀行『愛する意味』 (光文社新書)
長崎:西研『しあわせの哲学』(NHK出版)
熊本;池内了『なぜ科学を学ぶのか』(ちくまプリマー新書)
大分:小林武彦『生物はなぜ死ぬのか』 (講談社現代新書)
宮崎:佐久間淳『本当にわかる言語学―フシギなくらい見えてくる!』 (日本実業出版社)
鹿児島:河野哲也『問う方法・考える方法―「探究型の学習」のために』(ちくまプリマー新書)
沖縄:稲垣栄洋『はずれ者が進化をつくる─生き物をめぐる個性の秘密』 (ちくまプリマー新書)

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