今回は俳句の決まりや季語についてまとめました。テスト対策だけではなく、俳句の基礎を知りたい方にもおすすめです。季語に関する高校入試問題も紹介しています。
俳句の約束事
俳句は五、七、五の十七音を原則とする定型詩です。初句・二句・結句に分けることができます。
古池や 蛙飛び込む 水の音
松尾芭蕉
十七音よりも多い俳句を字余り、十七音よりも少ない俳句を字足らずといいます。
また、句の中に季節を表す季語を詠みこみます。
これを有季定型といいます。
上の俳句は「蛙」が春の季語です。
季語の例
春 | 桜、梅、椿、たんぽぽ、つばめ、蛙、雪残る、薄氷、花曇り、卒業 |
夏 | 梅雨、夕立、五月雨、風薫る、青田、涼し、滝、若葉、麦茶、萬緑 |
秋 | 稲刈り、天の川、露、名月、稲光、七夕、桐一葉、紅葉、すすき、きつつき |
冬 | 師走、北風、小春、初霜、冬こだち、寒牡丹、枯葉、落葉、火事、白菜 |
新年 | 初日、初春、年賀、独楽、若葉、門松、初夢、七草がゆ |
四季だけではなく新年の季語があります。
うっかり間違えやすいのが「雪残る」や「薄氷」です。雪や氷というと反射的に冬と答えたくなりますが、「春になっても残っている雪」「春先の薄く張った氷」のことなので春の季語になります。
同じように間違いやすいのが「小春」です。これも知らない人は春の季語だと思ってしまうのですが、初冬の暖かい日和のことで、冬の季語です。小春日和という言葉もありますね。

年賀状の文化がなくなりつつあるせいか、「初春」や「迎春」と言ってもわからない子どもたちが増えてきています。
もう一つの注意点は旧暦をもとに季語を考える点です。江戸時代は旧暦を用いていたため、現代とは季節の分け方が異なりました。
※旧暦というのは現在採用されている太陽暦ではなく、太陰太陽暦といって月の満ち欠けを基準にしていた昔の暦のことです。
旧暦では下記のように季節を分けます。
- 春 1月〜3月
- 夏 4月〜6月
- 秋 7月〜9月
- 冬 10月〜12月
たとえば、「五月雨」ですが、五月というと今の感覚では春のような気がしますが、上記の通り五月は夏です。夏の雨、つまり梅雨のことです。
松尾芭蕉の「五月雨をあつめて早し最上川」や「五月雨の降残してや光堂」で有名ですね。
七月七日の七夕も夏ではなく秋の季語になります。
歳時記は、季節の言葉をまとめたものです。
一句に二つ以上の季語を含む俳句を季重なりといいます。
約束事にとらわれない自由な俳句もあります。
五、七、五の定型にとらわれない自由律俳句や、季語を含まない無季俳句などです。
自由律俳句といえば種田山頭火と尾崎放哉が有名です。
下記の句は教科書にも載っています。
分け入つても分け入つても青い山
種田山頭火
咳をしても一人
尾崎放哉
種田山頭火も尾崎放哉も子どもたちが読んで楽しめる俳句が多いですね。
「や、かな、けり」など、俳句の意味や調子が切れることを示す語を切れ字といい、その部分は俳句の感動の中心になります。
金剛の 露ひとつぶや 石の上
川端茅舎
二句目の終わりに切れ字「や」があります。この句は二句切れですね。
「露」は秋の季語です。
万緑の 中や吾子の歯 生え初むる
中村草田男
この句は切れ字が二句目の途中に出てきます。このような句を中間切れといいます。
「万緑」は夏の季語です。
どちらも教科書に掲載されている有名な俳句のひとつです。
高校入試問題
高校入試でも俳句に関する問題が出題されることがあります。
2021年入試の岡山県では井上泰至『俳句のルール』から松尾芭蕉の俳句とその解説文が出題され、「季語」という用語を答えさせる問題が出ました。
2022年の岩手県では佐藤郁良『俳句を楽しむ』の文章から出題され、季語に関する問題が出ました。
絶えず人いこふ夏野の石一つ 正岡子規
この俳句と同じ季節を詠んだ俳句はどれか。ア、一枚の餅のごとくに雪残る 川端茅舎
2022年岩手県
イ、啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々 水原秋桜子
ウ、鳥の巣のあらはに掛る枯木かな 田中寒楼
エ、百合涼し右にゆれても左にも 河東碧梧桐
正解はエです。
ア「雪残る」は春、イ「啄木鳥」は秋で「落葉」は冬、ウ「枯木」は冬、エ「百合」「涼し」は夏の季語です。
「季重なり」の俳句も出てきていますが、夏を見つけ出すのは難しくありませんね。
その他の県も問題もいくつか紹介するので季語を考えてみてください。
これは新潟県で出題された問題です。
若葉して家ありしとも見えぬかな 正岡子規
この俳句と同じ季節を詠んだ俳句はどれか。ア、山茶花の散りしく月夜つづきけり 山口青邨
2022年新潟県
イ、鳥渡る空の広さとなりにけり 石塚友二
ウ、山国の星をうつして水ぬるむ 吉野義子
エ、噴水のしぶけり四方に風の街 石田波郷
ア「山茶花」は冬、イ「鳥渡る」は秋、ウ「水ぬるむ」は春、エ「噴水」は夏です。
問題の俳句「若葉」は夏の季語なので、正解はエになりました。
次は栃木県の問題です。
スケートのひもむすぶ間もはやりつつ 山口誓子
この俳句と同じ季節を詠んだ俳句はどれか。ア、山風に流れて遠き雲雀かな 飯田蛇笏
2020年栃木県
イ、名月や池をめぐりて夜もすがら 松尾芭蕉
ウ、音もなし松の梢の遠花火 正岡子規
エ、淋しさの底ぬけて降るみぞれかな 内藤丈草
正解はエです。「スケート」はアイススケートのことで冬です。エの「みぞれ」は冬の季語ですね。
その他の選択肢はアの「雲雀」は春を、イの「名月」は秋を、ウの「遠花火」は夏の季語です。
栃木県では俳句の知識問題が頻出で、2021年入試では季語ではなく下記のような問題が出題されました。
大寺を包みてわめく木の芽かな 高浜虚子
この句に用いられている表現技法はどれか。ア、対句 イ、直喩 ウ、体言止め エ、擬人法
2021年栃木県
正解はエの擬人法です。これは俳句特有というよりも韻文の表現技法についての問題ですね。

季語を知ると季節感がより豊かになり世界の見え方も変わります。俳句は五、七、五のわずか十七音の中に広がる言葉の宇宙です。これを機に俳句の世界に分け入っていきましょう。
中3生の定期考査対策「俳句の可能性」「俳句を味わう」については下記の動画で解説しました。
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