中学入試や高校入試では、作者名や作品名などを選ぶ文学史問題が出題される学校があります。今回は特に高校入試によく出るものをまとめました。

受験のために名前だけ覚えるのも味気ないので、興味がある本はどんどん読んでいってくださいね。
古典
三大随筆
作品 | 作者 | 時代 |
枕草子 | 清少納言 | 平安時代 |
方丈記 | 鴨長明 | 鎌倉時代の初め |
徒然草 | 兼好法師 | 鎌倉時代の末 |
三大随筆は入試だけではなく、中学校の定期考査でも出題されることがあります。タイトル、筆者、書かれた時代、もれなく全部覚えましょう。
渋谷幕張高校2022年入試では古文の問題で「徒然草」が出題され、漢字で作品名を書かせる問題がありました。
ジャンル問題
「随筆」の他にも古典にはいろいろなジャンルがあり入試問題にもよく出題されます。たとえば、随筆以外だと下記のようなものがあります。
作品 | 作者 | ジャンル |
土佐日記 | 紀貫之 | 日記 |
源氏物語 | 紫式部 | 物語 |
平家物語 | 未詳 | 軍記物語 |
今昔物語集 | 未詳 | 説話 |
奥の細道 | 松尾芭蕉 | 紀行文 |
説話というのは語り伝えられた神話や伝説、民話などのことでジャンル問題では物語と区別して出題されることがあります。
渋谷幕張高校2021年入試の古文では下記のような問題が出されました。
問七 この文章の出典である『沙石集』と同じ分野(ジャンル)に属する作品を選びなさい。
ア、 枕草子 イ、源氏物語 ウ、竹取物語 エ、平家物語 オ、宇治拾遺物語
渋谷幕張高校2021年国語
ちょっとしたひっかけ問題です。イウエオがすべて〇〇物語なのでアの枕草子を選んでしまいそうですが違います。『沙石集』は鎌倉時代の仏教説話集なので、説話集であるオの『宇治拾遺物語』が正解ですね。
三大歌集
歌集 | 撰者 | 時代 |
万葉集 | 大伴家持 | 奈良時代 |
古今和歌集 | 紀貫之など | 平安時代 |
新古今和歌集 | 藤原定家など | 鎌倉時代 |
※古今和歌集の撰者は紀友則、紀貫之、凡河内躬恒、壬生忠岑の4人です。
※新古今和歌の撰者は源通具・藤原有家・藤原定家・藤原家隆・藤原雅経・寂蓮の6人です。
歌集といえばこの三つ。三大歌集とも言われ、定期考査にも出題されることがあります。
近代文学
夏目漱石
言わずと知れた国民作家の夏目漱石です。東京帝国大学英文科を卒業したあと、学校の先生をしたりイギリスに留学したりしています。『吾輩は猫である』でデビューしたのは38歳の時でした。漱石の人生を余裕をもって眺める作風は余裕派と呼ばれました。
中3国語教科書(光村図書)には『草枕』の冒頭文が紹介されていますね。
山路を登りながら、こう考えた。
夏目漱石『草枕』
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。
慶應義塾高校2022年入試では夏目漱石の作品で『門』を選ばせる問題が出題されました。
夏目漱石といえば『坊ちゃん』『吾輩は猫である』『こころ』などが有名ですが、『門』は知らない人もいるのではないでしょうか。ただし、この時の問題は他の選択肢が「風立ちぬ」「高瀬舟」「トロッコ」「雪国」だったので消去法でできる生徒もいると思います。
『三四郎』『それから』『門』は前期三部作といわれています。『坊ちゃん』や『吾輩は猫である』のイメージしかない人は驚くかもしれませんが、漱石は三角関係の恋愛を描いた作品がたくさんあります。
志賀直哉
志賀直哉は雑誌「白樺」を創刊し、理想主義、人道主義的な作風は白樺派と呼ばれました。「小僧の神様」「城の崎にて」などを発表し小説の神様と称されます。
中3国語教科書(光村図書)にも『真鶴』の冒頭文が紹介されていますね。
早稲田実業高校2020年入試では有島武郎の文章が出題され、有島武郎と同じ「白樺派」に分類される作家は誰かという志賀直哉を選ばせる問題がありました。
慶應義塾高校2019年入試では志賀直哉の作品を二つ選べという問題が出題されました。「暗夜行路」「和解」の二作品を選ぶ問題でした。
宮沢賢治
岩手県の詩人、童話作家の宮沢賢治です。農学校の教諭をしながら作品を書き続けました。日蓮宗に傾倒していたことでも知られ作品にも影響しています。
宮沢賢治は『銀河鉄道の夜』など子どもたちにも愛読者が多い作家ですね。
明治大学付属明治高校2021年入試では宮沢賢治の作品で『よだかの星』『セロ弾きのゴーシュ』『注文の多い料理店』をすべて選ばせる問題が出題されました。

私も小学生の頃から宮沢賢治を愛読していて、初めて暗唱した詩が「春と修羅」でした。宮沢賢治を読むと心が洗われるような気がします。
川端康成
川端康成は日本人で初めてノーベル文学賞を受賞した作家です。横光利一らと「文藝時代」を創刊し、その独特の比喩や表現法から新感覚派と呼ばれました。
渋谷幕張高校2019年入試では川端康成の作品を二つ選べという問題が出題されました。「伊豆の踊子」「山の音」の二作品を選ぶ問題でした。
『雪国』については下記のブログ記事を書きました。

近代文学の問題では、まず好きな作家をひとり作るのをお勧めします。一人の作家について詳しくなると、他の作家についても自然と興味がわいてきます。文学史の問題を出題するということは、受験生に文学に興味をもってほしいというメッセージなのです。
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